362人が本棚に入れています
本棚に追加
突如、脳内に声が響く
気のせいではない。その声は、俺に向かって声をかけている
念話の類いではない。そもそもこの世界に、念話を扱える者はいない
ならこの声は……?
[ご大層にナレーション入れなくていいから。いらないからそういうの]
「いやぁ、初登場くらい印象深いものにした方がいいかなと」
冷めた口調で文句を言ってくる女の声に、軽く笑って返す俺
[そんなことしなくても充分よ。というか私初登場じゃないわよ?]
瞬間、頭の中であの記憶が再生された
銃を持って逃げる男。泣き叫ぶ妹。そして、血溜まりに沈む少女
あの時、『恐怖』に呼び起こされた、俺が封印していたトラウマ
「………克服したトラウマ想起させても意味ねえぞ」
[あら、その割に身体が震えているけど?]
「チッ」
そりゃそうだ。簡単に克服なんて出来ない、というか克服しちゃダメだろ。大切な人を失うトラウマなんざ
そう。つまりこいつ、頭の中の声の主は、俺が【狂喰無尽】で喰らった『恐怖そのもの』。【狂喰無尽】の喰らったもの全てを自身の力にする効果のせいで、『恐怖』の核となっていた魂が別人格として俺の中に宿ったもの
俺の髪が一部紫になった原因でもある。『恐怖』本人(人?)は黒っぽい紫だからな
最初のコメントを投稿しよう!