始まりの日

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 朝だ。いつも通りの朝。時計は6時の長針が下に行ったことを示している。11月の第二週、世間的にはハロウィンが終わり、商魂たくましい店はクリスマスを意識している。僕は起き上がり、昨晩の内に用意していた着替えに手を掛ける。 「遥輝!そろそろ起きなさい!」 一階から母の怒鳴り声。起きてるよー、等と適当にあしらい、着替えを続ける。まだ高校の制服では無く、ただの部屋着だからすぐ済むのだけど。 着替え終わった僕は階段を下り、洗面台に向かい顔を洗い歯を磨く。鏡に写る姿はいつも見慣れた自分の姿だ。高校二年生の後半男子。身長だけは伸び、体系も普通だが、顔も普通の男子だ。イケメンとは言い難い。 「父さんは?」 「いつもの通り、もう出かけた。」 「そっか。」 洗面台を離れ、リビングに言った僕は、母に姿の見えない父の所在を尋ねた。毎朝の決まりみたいな物だ。父は朝早くから仕事に行くことが多い。しかし、たまにまだ寝ている事もある。何の仕事をしているかは詳しく知らないけれど、興味も特に無い。父本人とも、会話をここ最近はしていない。こちらに無関心の相手に関心を持つことはそう容易ではないと思う。 『本日未明、身元不明の男性の遺体が発見されました。場所は… と箱の中のアナウンサーが、毎日の様に増え続ける殺人事件の原稿を、無感情に読み進めている。このひとも飽きないのだろうか。 「ほんと、物騒な世の中ね。」 食パンを齧りながら、決まり文句のように母が呟く。そうだね。と僕も答える。寿命通りに生きることも難しいこの世界で、僕は惰性のみでいつまで生きられるのだろう。わかるはずも無い問いはしばらくの間胸の中で回り続けた。
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