始まりの悲劇

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ある日の夏の夜。空には煌めく星々が輝き、眺めているだけで、夏特有の暑ささえも吹き飛ばしてくれる。だが、そんな綺麗な夜空とは裏腹に、僕の心は酷く荒れ果てていた。 ほんの数分前のことだった。 今日は会社の方で残業があり、帰宅するのが深夜になってしまった。まともな夕食を食べていない僕は、空腹を満たすものを買うために、コンビニに立ち寄ろうと考えたのだ。 いつも僕が通っているそのコンビニに行く途中に、公園がある。公園と言えば、純真無垢な可愛らしい少年少女が、砂場や滑り台で遊び、その様子を親御さんが微笑ましく見つめるーーなんていうイメージがあるが、僕はその公園で子供が遊んでいるのを見たことが無い。 それもそうだ。その公園は、高さがそれぞれ異なる鉄棒が立ち並んでいるだけで、その他の遊具は一切無く、だだっ広い土地を無駄にしているような場所だからだ。 そんな空き地同然と言っても過言では無い公園に、僕がふと足を止めたのは、そこに人影を見つけたからである。この公園に人が訪れることすら珍しいというのに、こんな時間にどうしたんだろう。 やけにその人影が気になった僕は、公園内に入り、出入り口付近に植えられている木の陰に隠れた。
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