始まりの悲劇

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グサリ 手始めに、何かが何かを貫通する音。 ブシュウゥ……! 次に、液体のようなものが、何かから噴き出す音。液体の色が何色なのかは、この暗闇の所為で認識することは不可能だ。 それでも、それが何を示すのか、僕には理解出来た。否、理解出来てしまった。 ーー殺人。 脳裏に浮かび上がった不吉な言葉に、僕は目を凝らし、体を移動させ、目の前の様子を観察する。 親友の前に、横たわる女性。女性の心臓部と思われる場所には、キラリと怪しく光る鋭利なナイフが突き立てられていた。 「……!」 目の前で起きたであろう出来事に、僕は息を飲んだ。視界のどこかで殺人が起こったことも恐怖を煽られたけれど、それよりも、親友が殺人を犯したことの方がショックだった。
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