始まりの悲劇

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グイッ! 親友に肩を掴まれた時、嗚呼、僕もこの女性のように親友に殺されてしまうんだ、と思って、今まで親友と過ごしてきた時間が、走馬灯のように駆け巡る。 思えば親友とは、青春時代の頃から仲が良かった。爽やかで、元気で、いつも笑顔でいて、僕だけではなく、クラスの皆にも優しくて、後輩に慕われており、先輩や先生から可愛がられていた親友。 学校を卒業し、会社に入社した時、偶然親友と一緒だった。その時も、性格も容姿も何もかも、青春時代と変わらなかった。 なのに、こうなったのは、何故?何が親友をこうさせたのか?パニックを引き起こしている脳内に、大量の疑問が浮かぶ。 僕はまだ、現実を受け入れられずにいた。否、親友が女性を殺害しただなんて、誰が信じられようものか。 ーーこれが夢なら覚めてくれ。 僕は心の中で必死に願った。今起きていることが、現実ではなく夢であることを。 しかし、その切実な願いは、当たり前というべきか、神様にも親友にも届かなかった。
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