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「計算外だったなあ」
赤ずきんもどきがブツブツ言いながら暗い路地に入り込んでいく。
彼と入れ違いに店のドアを開けた男には気づくことは無かった。
瞬間見られたことすら気づいていない。
主に報告する為、どんどん奥に入り込む。
ビルとビルの間、月明かりすら入らない袋小路で彼女は待っていた。
「失敗したようだな」
錆の効いた重低音。
覗かれていたのか?
思わず身がすくむ。
「もとより気にしておらん、今回は試してみただけだ」
くつくつと笑う主に腹の底が冷える。
申し開きはしない方が良さそうだ。
「申し訳ありません」
「よい。
して、鎖の状態はどうだった?」
そう、主の命は魂を縛り付けている悪魔の鎖、呪いが緩んでいないかどうかの確認。
鎖はマーキングと同じ。
鎖がついている魂に他の悪魔が手を出すことはない。
上級悪魔なら格下の悪魔の鎖を断ち切り奪うことも可能だが、そこまで欲しい魂が今の人間界にあるのか、というところか。
何といっても悪魔にとって人は餌でオモチャの役割しかないのだから。
ただ、鎖が緩んでいると魂本来の力が動き出すので、力の弱い使い魔でもその魂に入り込むことが出来る。
折角マーキングしたオモチャをかっ拐われるとなれば、鎖をつけた方からしてみれば、トンビに油揚げだ。
今夜彼女の元を訪れ誘惑を試みたのは、鎖が緩み魂が動き出していないかどうか、確認するためだった。
「何とも申せません。」
頭を深く下げながら、報告を続ける。
「確認できる寸前で邪魔が入りましたので。」
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