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聞き間違いだろう。
?
今一瞬、目の前に靄がかかったような……
気のせいか。
彼女の手が目に入る。
優雅な仕草でフォークをもつ手は以外にも大きく細長い。
……あの指を舐めたい。
口の奥まで飲み込んでそのまま手のひらを伝い甘噛みしながら首筋に……
はっと正気に戻る。
相変わらずの風景。
目の前にはランチの皿。
サラダを頬張る部下。
何?
今の。
いきなり沸いた性衝動。
「主任?」
心臓がばくばく言ってる。
息がしにくい。
これは一体何?
目の前にいる部下が眩しく見える。
嚥下する喉の動きから目が離せない。
まさか彼女に発情した?
食事してる最中に?
そんなこと、今の今まで無かった。
今までも女性と関係を持ったことが無かった訳じゃないけれど、こんなことは起きたことがない。
ああ、これは。
もしかして。
加藤くんが言っていた、あれか?
恋に落ちる瞬間、とか。
馬鹿馬鹿しい。
私にはそんなもの全くもって無縁の代物だ。
そう嘯いてみるけれど、やっぱり彼女の顔が見られない。
仕事に早く戻りたい。
彼女と離れて頭を冷やしたい。
そう思えば思うほど、
残酷な時間は嫌になるほどゆっくりと過ぎていった。
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