目覚め

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夕暮れと呼ぶには遅すぎる時間。 何故だか分からない。 公園の奥の雑木林の中。 雨上がりでぐぢゅっとぬかるむ地面。 じんわりと布シューズに染み込んでくる雨水。 真っ暗なはずなに周りがよく見える。 青い月に照されているみたいな、硬質の明るさ。 よく見れば、あちらこちらに肉片。 犬なのか鴉なのか、人間なのか。 判別もつかないほどにグチャグチャなピンク色や赤色の塊が飛び散っている。 見ているのは私。 なのに、私じゃない。 背後から何かが近づく。 逃げる暇なく肩を押さえつけられる。 「こんな雑魚どもにお前の精気をくれてやることはならん。 お前は私の物だ、忘れるな」 そう言って聞いたことのない言葉を低く呟きだした。 まるで呪文のように。 紡いだ言葉が目に見える鎖になって延びていく。 先端が方向転換して私に向かってくる。 手は肩に置かれたまま。 動けない。 銀色に輝くチェーンが蛇のように私の体に巻き付いていく。 どんどん締め付けられていく。 体が切れてしまう! 恐怖が悲鳴すら奪う。 鎖は。 私の体に入り込み、そのまま締め続けた。 内蔵を締め付けられる不快感。 最後、引き絞られる感覚と共に意識を無くした。 目を覚ましたのは自分のベッドの中だった。 夢を見たのだろう。 子供だから。 リアルすぎる夢もアリだ。 ただその日を境に、それまでも薄かった感情の起伏が殆ど消えた。
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