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一つの転機があった。
高校三年。
卒業式の一週間前に登校したのは大学合格の報告をする為。
職員室に向かう途中、すすり泣きが聞こえたような気がした。
音の聞こえた方角を見ると、がらんとした三年の教室から密やかなため息。
珍しく好奇心が湧き静かに近寄りそっと覗くと、見たことのある男女が見たこともない絡みをやっていた。
隣のクラスの男子と古典の女先生。
色気ばっかり振り撒く先生と生徒達には揶揄されているけど。
皆知らないんだよ。彼女の古典訳本や英訳本、研究書。どれだけ学会に認められてるか。
図書室に並んでることすら知ってるのかどうか。
そんな彼女が机の上で足を露にし、喘ぎを必死にこらえていた。
天才肌の彼女の体に触れられるなんて、羨ましい限りだ。
(一応一、二年は授業中だけどね)
興ざめした私はその場を離れようとした、その瞬間、
先生と目が合った。
固まってしまった私に先生は照れたのか恐怖の為か、私にほんわりと笑いかけた。
つられて私も笑い返して静かにその場を離れた。
男子は私のことにまるで気づいていなかったから、今でもその日の事は私と先生の秘密。
その時私は自覚した。
異性に対して性欲がない。
まあ、女の体は性欲なくても何とかなるけど。
同性なら、いけそうだ。
先生の足には心も少し動いた。
恋愛は、無理。
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