神の御子

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桜の降る季節に生まれた彼は、孤高の人でした。 まだ幼い学友達が、己の内にのみ夢を見ている頃。 誰もが庇護の下、自らの欲を満たす快楽を覚える頃。 彼は、まるで、 この世ならざる世界までをも見透すかのような、 そんな瞳を持っておりました。 好意、憧れ、そして嫉妬と羨望。 彼を取り巻く視線は、およそ、 そのような色を纏っていたように思います。 弾けるような眩しい色。 澱んだ暗い水底の色。 ほんのりと光る淡い色。 様々な色に囲まれ、 彼はいつでも、笑っていました。 彼は、人が好きでした。
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