生徒会役員

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 それに、身体が強張って、呼吸さえ怪しくなりかけたのに、彰は抗うことが出来た。これは大きな進歩だった。そのまま過呼吸を起こしていてもおかしくないはずなのに。噛みつくことしか出来なかったのが、少し悔しいけれど、護身術を習おうにも男と組み合うことが出来ない彰には無理な相談だった。 「顔、赤いかな?」  赤いまま食堂にいけば、優一朗や亘に何かがあったとバレてしまうと彰は思った。 「うん、ちょっとだけど。会長だったら気付くと思う」 「頬、冷やしていく? 氷持って来てよ雅」 「でもバレたら・・・・・・」 「その時は、その時だよ。彰、困ってるしさ。人を助けるのも生徒会の役目だろ」 「彩ちん、格好いい!」 「はいはい――。わかったから行ってきてよ。中庭に出ているから」  ここはいつ人が通ってもおかしくない廊下だった。促されて中庭のベンチに座ると、横に彩が座る。 「僕はね、言ったほうがいいと思うよ会長に。さっきの人達、会長の親衛隊の先輩だった」  噂の親衛隊かと、彰は頷く。 「・・・・・・親衛隊ってなんなんだ?」  彰にしてみれば、親衛隊の意味がわからなかった。アイドルの親衛隊とかは聞いたことがあるけれど、優一朗は一般人だ。 「え、そこから?」  呆れたような彩の声に、ウっと彰は言葉を詰まらせる。 「だって、優一朗はアイドルじゃないし・・・・・・」 「似たようなもんだって。会長を拝め奉り、会長への恋慕をとりしまり、会長が過ごしやすいように会があって・・・・・・」  彰の引いていく気持ちを察して、彩はゴホンとわざとらしく咳ばらいをした。 「そんなの楽しいのか?」 「僕は親衛隊じゃないからわからないけど、会長の凄さはわかるよ。勿論成績もだけど、あの人の凄い所はやると決めたことは全てやり切るし、顔もいいし、声もいいし、格好いいし、不愛想だけどそれもまたいいんだ」  彰は、熱く語る彩に「本当に親衛隊じゃないの?」と至極真っ当なことを訊ねた。それくらい彩の声には憧れや優一朗に対する想いが溢れていたのだ。 「・・・・・・会長を見ていたいから、生徒会役員を引き受けたのは、確かだけど親衛隊じゃない・・・・・・」  入学式から新入生代表を務めた優一朗は、カリスマを発揮していたそうだ。
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