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「だから、君が来てからの会長を見て、混乱している親衛隊の気持ちもわからないでもない」
きっぱりと言い切った彩の眼差しは、とても真っすぐで、彰は思わず視線を逸らした。
「混乱か・・・・・・」
誰よりも混乱していると思っていた彰は、それが過ちだということに気付いた。
「でも、それは君のせいじゃない」
彩の言葉は、すんなりと彰の心に届いた。
優一朗が、彰に執着すること、それを周りがよく思っていない事、それらをどうすればいいのか、何故こんなことになっているのか、彰には考えてもよくわからない事ばかりだった。だから、彩の言葉が嬉しかった。
「ありがとう・・・・・・」
微笑んだ彰に、彩は少しだけ優一朗の気持ちもわかってしまった。
「おーい、氷持ってきたぞ。どうした? 彩ちん、顔赤いけど、お前も冷やす?」
「いらない――。雅、お前遅い!」
差し出された氷が入ったビニール袋を受け取り、少しだけ熱い頬に当てると、気持ちが良かった。あんなことがあったのに、何だか彰は嬉しくて、二人が話ているのを黙って聞いていた。
顔は腫れることもなく、赤みも直ぐにとれて、三人は食堂に向かった。
生徒会役員のためのと言ってもおかしくない一段高い場所、丸いテーブルに冬弥がいた。
「冬弥先輩、一人ですか?」
「珍しいな彩と雅が彰と一緒か」
「入口で一緒になったんで連れて来たんです」
彰の手を両方から引いて、彩は「ほら、こっち」雅は「お礼もしてもらってないよな」という。手を握られても、何故だかわからないがそれほど嫌ではなかった。
「でもおれ、生徒会役員じゃないし」
「別にここが生徒会役員の席なんて書いてないだろう。お前は気にしすぎで、優一朗は気にしなさすぎ・・・・・・。バランスいいのか悪いのか本当にわからん」
見回しても優一朗はいなかった。
「優一朗は――?」
「さっきまでいたんだけどな。電話掛かってきて、血相変えてどこかにいった」
珍しいよなと雅が呟く。
「どこに――?」
彰は嫌な予感しかしなかった。
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