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「彰、行かなくていいと思う」
彰が着いたばかりの席を立とうとしたのを彩が止めた。
「でも――」
「自業自得だよ?」
彩も思うところがあったのだろう。
「でも――、おれは後で悩んだり、後悔したりするのはもう嫌なんだ――」
彰があの最悪の出来事で一番辛かったのは、彰のために優一朗が傷をおったことだった。有段者が人を傷つけるということが、どれだけ反感をかうかということは昔、優一朗に聞いたことがあったのだ。
『力は誇示するものではないんだ。身を守るためだけに――、そのためのものだ』
優一朗は誇らしげだった。その優一朗が、あの男を死ぬかと思うほど叩きのめしたと聞いた。優一朗が小松崎グループの後継から外されたわけ、それはおれのためにしたことなのだ。もう、これ以上、優一朗に傷などついてほしくなかった。
「後でするから後悔っていうんだけどね・・・・・・」
「多分生徒会室じゃない?」
雅の声に彰は走り出した。
「まって、彰、場所わからないんじゃないの?」
「仕方ないな・・・・・・。一緒にいってやるよ」
冬弥と双子は一緒に彰を先導しながら、生徒会室を目指した。
ドンドンと木製のドアを冬弥が叩く。鍵で開けたのに開かなかったからだ。
「ちょっと今忙しいので、後で来てもらえますか?」
冷たい声が少し開いた隙間から聞こえた。
「優一朗!」
「彰――?」
優一朗の驚きの声に、彰は今更ながら何かを感じる。
「開けて――。優一朗! 開けてくれ」
「嫌だ・・・・・・」
優一朗の懇願するような囁き声に彰は我慢出来なかった。そんな声を出して欲しくないのだ。
「開けろ、優一朗。何があったか彰もだけど俺らも知りたい」
優一朗が諦めたように力を抜いた。その隙に四人は生徒会室に入ったのだった。
「あーあ・・・・・・」
「これは――?」
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