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「何でそんな風に思ったの? 僕は、近藤さんが会長に首でも絞められて気絶しているのかと思ったけど」
「だって・・・・・・うれしくて気絶だろ? 優一朗のことが好きな人がうれしくて気絶するくらいのことっていったら・・・・・・」
彰はそこは頑張って胡麻化した。まさか優一朗のキスは(中学生当時でさえ)腰が抜けるほどのものだったと、言うわけにもいかないからだ。
あれは、きっとキスをされて嬉しくて気絶したのだと彰は思った。
「そうかなぁ。近藤さんと付き合っても会長は楽しくないと思うけど」
「でも彩ちん、親衛隊長の近藤さんが会長と付き合ったら、今彰に向いている敵意は全部近藤さんに行くと思うよ」
「会長ならやりそうだね」
「で、さっさと捨てれば、近藤さんも再起不能だし」
二人は恐ろしいことを言っているような気がした。
「なら、彰はもう安心だね。ご飯食べに行こうか」
「残ってる冬弥さんにメールでそう伝えるね。皆心配してると思うよ」
二人は恐ろしい話をしていたにも関わらず、笑顔で彰を促した。
祖父のいる田舎で学校に通っている間、彰はどうにか学校に通ってはいたが、思い詰めた時、こんな風に笑えることはなかった。
彩と雅の雰囲気のせいか、何故なのかわからないが彰は、この学園に来て良かったと初めて思ったのだった。
「おかえり、彰」
「亘・・・・・・」
部屋に戻ると亘がパソコンを前にパンを齧っていた。
「優一朗、あの人と・・・・・・」
自分は関係がないと思っていたのに、亘の顔を見たらそう尋ねていた。
「近藤さん? がどうした?」
パソコンから顔を上げず、亘は質問を返す。
「いや、何でもない――。心配かけてごめん」
今更なのに、訊ねてどうするんだと、彰は言葉を濁した。
「彰の心配はあまりしてないよ」
「そっか」
「ああ、でも何かあったら俺に相談くらいしてくれよ。事によっては優一朗には言わないからさ」
心配していないと言いながら、相談しろというのは矛盾だと思ったが、彰は素直に頷くことが出来た。
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