⑤倉田の過去

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1週間は、アッという間に過ぎ、 明日から夏休み。 オレは隣の部屋をノックする。 「おー、入れよ」 倉田が叫ぶ。 いつ頃、帰る予定なのか? 聞いておこうと倉田にメールをした。 「後で部屋に行く」っと。 扉を開け部屋に入る。 『あれ? ひとり』 「天沼なら走ってるよ」 『へー、暑いのに頑張るな』 「オレらとは違うんだよ」って倉田が言った。 『だな、いつ帰る予定?』 「8月…かな、かなたはいつがいい オレ 一緒でいいよ」 『長谷先輩は? 大丈夫なの?』 「あー ん、すぐに帰るって言ってたな、 何かあれば、連絡して来るから大丈夫」 倉田は伏し目がちに話す。 『真っすぐ、家に帰りたくないなら、 そのまんまオレんち来てもいいぞ…』 そう言うとオレに視線を向け倉田は薄く笑った。 「…かなた、ありがとうな」って笑った。 倉田のお母さんは、倉田が初等部の時に、 病気で亡くなった。 その後ずーっと、お父さんが男手ひとつで倉田を育ててきた。 倉田が中等部の2年の時にお父さんは、 若い人と再婚した。 最初の頃は、倉田も喜んでいた、 凄く可愛がられ、 お母さんってよりはお姉さんが出来た様だった。
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