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「リカ~!」
「久しぶり~。」
珍しく待ち合わせの時間より早めに郁子が到着した。
「渚は?」
「うん、まだ…」
「珍しいね、渚が遅いの。」
「郁子が早めに着いた方が珍しいよ。槍でも降るかもしれないね…」
「ちょっとぉ!大袈裟~!」
「あっ!来た来た。渚~!」
「お待たせ~。あれ?郁子早くない?どうした?時間間違えた?」
「あはははは…」
「酷いよ二人共…」
拗ねる郁子の腕を掴んで歩き出す。
「うぅーっ、寒いね~。見て!また雪降りそう…」
灰色の空を見上げる郁子。
「天気予報では今日は降らないって言ってたよ。」
「もう寒いの嫌だよー。」
「ライブ何時から?」
「もう始まってるけど、カイが出るのはまだまだ。」
「なんかあったかい物食べてから行こうよ~!」
「そうだねっ!」
私達はライブハウスの近くにある小さなカフェに入った。
「ね~、渚はリカの彼氏に会った事あるんでしょう?」
「うん、あのタトゥーだらけの人でしょ?」
「タトゥー?!」
驚いた顔の郁子が私の顔を覗き込む。
「リカ、そんな危険人物と付き合ってんの?大丈夫なの?」
「あはは。大丈夫だよ、カイは優しい人だし、誰よりも私を理解してくれてるから。」
「私達より?」
郁子がまた膨れる。
「郁子や渚とは違う…なんていうか…」
「運命の人?」
渚がにやける。
「うん…、そうだと思ってる。」
「ぎゃ~!なんだそれ~!のろけ過ぎ~!」
興奮した郁子がテーブルを叩く。
「リカ、エイジ君も来るよね?」
「うん、もちろん。」
「渚はそっち目的?もーっ!私にも出会いを下さ~い!」
私達は笑った。
こんなに笑ったのは久しぶりで楽しい。
早くこの二人にカイを会わせたい。
そしてカイの歌を聴かせたいと思った。
二人はどう感じるんだろう…私みたいに感動してくれるかな?
そんな事を考えながら今入ってきたお客さんをチラリと見た。
「あ…」
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