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「そんな奴等を踊らせてやれよ。みんないい顔してんのステージから見てみろよ。」
「無理だよ…私には…、カイみたいにはなれないよ。」
不甲斐ない自分が情けなくてカイから目を反らす。
「せっかく聴きに来てやったのに…がっかりさせんなよ。」
カイに髪の毛をくしゃくしゃに撫でられる。
悔しくて唇を噛む。
自信が無くてステージに立てない…
あの人達を喜ばせられる自信なんてない…
でも…カイと一緒なら…
「カイ…一緒に…」
突然楽屋のドアが開く。
「あれ?誰かいました?今話し声が…」
スタッフがキョロキョロと楽屋を見渡す。
目の前にカイはいない…
「いいえ…私一人です…」
「ジョーさんが呼んで来いって言ってますけど…」
私はぐっと歯を食いしばる。
そして目を閉じて…大きく息を吐いた。
「あの…」
「行きます!」
「じゃあすぐお願いします!」
「はいっ!」
スタッフに誘導されてステージ袖に待機する。
足がガクガクと震え出す。
ダメだ…緊張する!
緊張しすぎて今にも吐いてしまいそうだ。
震える足を叩きながらしゃがみ込む。
歌わなきゃ!歌わなきゃ!
カイがせっかく来てくれたんだから、精一杯やれる事をやらなきゃ…
その時ふわりと何かが私を通り過ぎて…ペットボトルの水を浴びながら飲むジョーさんの身体がガクリと崩れた。
「あっ!!」
そして何事も無かったように立ち、私に手招きをした。
その顔はジョーさんでは無かった…
「カイ…」
スタッフが後ろから背中に触れた。
「立てますか?」
私は何も考えずにステージに向かって歩き出した。
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