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転移先は遺跡のような場所だった。
岩壁が横に広がる広大な地。足元は不確かで、ゆらゆら~ぐらぐら~してんねん。
視界遮る霧の中で靄(モヤ)の道を歩いてるよう。
砂色の建物が遠くに点々と見えるのは、屋根の頂部分やろう。
「ココは?」
「風の海だ。さて。無粋な真似はしたくないが仕方ない。情事の邪魔するかな?」
ええっ?じょ情事て言い方が卑猥やわ。
「一颯と颯真に宵闇の彼方が番人の案件諸々、報せないとな?」
ニヤリ。
妖しく微笑むシエロはド迫力やった。
「わ、わわかった。」
返事しながら、キス待ち顔のシエロに吹き出してしもた。
「ユウコ。俺の胸中察しろよ?」
右手を掴んでグッと引き寄せられ、そのまま指を絡ませた。
「バベルを目で殺しかけたぞ?」
シエロなら殺りかねへん。眼光を貫通させそう。
【シエロ大好き。】
背伸びして首に両腕を絡ませると、しなだれるよう凭れた。シエロが私の腰に腕を巻き付けて甘く縛った。
深い青い瞳に銀色のベールがキラキラしてる。吸い込まれていきそう。
「おいっ!そっちが盛ってどうすんだよ!?」
ギクッ。
いつもの颯真が白けた視線を飛ばしてた。
「我が家へようこそ。」
艶やかな一颯が手招きしてたので、シエロの腕から抜け出し、一颯の胸に飛び込んだった。
「おいユウコ?」
慌てた声色でシエロと颯真が同時に叫ぶのを、背中で聞き流して、感謝の気持ちを込めて一颯を見た。
「一颯。颯真とイズミを助けてくれてありがとう。ホンマに一颯が怒ったらイズミなんて瞬殺やろ?」
「ふふふ。んねぇ?あんなカタイ奴より、ずっと気持ちヨクさせてあげるわよ?ユウコなら3ピ……
ベリッ!!
颯真は一颯をシエロは私を引っ張った。マジックテープをベリベリ剥がす幻聴が聞こえたわマジで。
颯真と久しぶりに話せた気がする。
「マイ姉さんが番人とは世も末だな。あの厚塗りッイタタタタ。」
思いっきり、ほっぺをつねった。
「麻衣子の甥っ子なら容赦しぃへんよ?偉そうにどの口が言うてんねん。」
「叔母じゃなく姉と呼ばせてるんだそ。」
「はいはい。」
長い長い1日が終わり夜が更けてゆく頃には、うとうとシエロの胸で眠っていた。
ギルドカードの受信履歴を気付きもせずに…
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