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高笑いしながら、麻衣子は威圧的な視線をビシバシ飛ばしてくる。
はっきり言うてウザい。
色恋するゆとりがなかったし、する気持ちも低かっただけやわ。
カチンときたし、つい強気で言い返した。
「子ども優先に生きてきて何がアカンの?成人するまでは私の責任やろ?」
「相変わらずド真面目でつまらないわ。知ってた?宏海(ヒロミ)はね、アンタと付き合う前に、私とも付き合ってたのよ?」
勝ち誇った強い瞳。宏海とは夫の名前やねん。しょーもない挑発しよる。麻衣子は何がしたいねん?
「知ってるけど?子どもができたって話した時に教えてくれたわ。なぁ麻衣子。元の世界に戻りたいん?」
「戻りたくないし戻れないわ。だから決めたの。あくせく働いたりしなくても生きられるじゃない?でも、老いていくの。私とバロンだけ流れてる時間が前のまま。」
麻衣子が、ちらり白いネコを見た。
「バベルを追って飛び込んだ白い点が、バロンって白いネコなんやな?」
「にゃあ。」
【シエロ。にゃあ、しか言わへん。どないしよ?】
【魔王のピアス使えば大丈夫だ。】
レイナの金色ピアスに意識を集中したら、にゃあ。ではなく言葉が溢れるように流れ込んできた。
【マイコは結婚前提に付き合ってた男性にフラレてから変わってしまったの。誰も信用していない悲しい人よ。今まで彼氏をとっかえひっかえ、二股三股当たり前って人がバカよね?逆の立場になったのよ。
わたしだけは特別だとかわいがってくれるし、わたしがバベルの側に行きたかったの。マイコはわたしのオマケみたいなものよ。】
うーん。見た目かわいらしいネコやのに中身は辛辣なオンナみたいやな。まぁ飼い主に似るって言うし、納得してまうわ。
「バロンはどうしたいん?」
【バベルの側にいたい。バベルのために生きたい。】
「バベルは獣人族に転生してるで?」
【いいの。】
「じゃ、自分で行動しいや?私にべったりするんお断りやで。」
見上げた麻衣子は唇をキュッと噛み私を睨んでた。
「ズルいズルいズルいズルい!」
いつの間にか黒いローブを纏い、手のひらには黒煙が渦になり、ぐるぐる回ってるやん。
その黒煙を一気に私へ放ちながら、不気味な笑い声を上げてた。
【光彩奪目(コウサイダツモク)】
黒煙を自分に届く前に消滅させた。
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