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今度は私のターンやわ。
「麻衣子。コッチに来て何を見てたん?何をしてきたん?一望無限…広く美しいこの世界を眺めて何も感じないん?
力を吸収する能力「コピー」やんな?尸使いの能力を得て人を操って何が楽しいねん。バカは麻衣子やわ。
雪乃、なつみ、イズミ。私のフレンドやねん。仲間をこれ以上傷付けんといて。」
【暗香疎影(アンコウソエイ)】
どこからともなく漂いくる花の香りと、月光や夜露に照らされて、まばらに映る木々などの影を例えた言葉を鍵に、麻衣子の心へ羽根を伸ばした…
若かりし頃の記憶を手繰り寄せていく。
皆でお花見をした遠い日を彷彿させる紅梅の匂い。その紅梅の匂いの中で輝く月と水面に散る花びらが波紋を広げていく。
無邪気に笑う幼い麻衣子はとてもキレイやった。
「麻衣子。あなたにとって幸せとは何?」
「幸せ?何それ?私は欲望に素直なだけだわ。お金も男も美貌も欲しいだけ。何が悪いの?」
さっきのバロンにそっくりやん。
「ふーん。ならなんで私を敵視するん?」
「わからないの?私が欲しいものを有羽ちゃんが全部持ってるからよ?その髪、その目、その声、その姿。欲しいわ有羽ちゃんが。」
……アホや。
「あんな?ゲームのアバターやねんで?私が望んだワケちゃうねん。好きな見た目にコピーしたらええやん。」
ホンマにコピーされたらキモいけど。
「今の麻衣子めちゃめちゃキレイやで。私の1コ下とは思えへん肌のキメ髪のツヤ。
でもな?中身は変わりたいと思わな変わらへんで。」
憤怒のあまり小刻みに震える麻衣子の唇が痛々しい。
【ラゴスクス。メトシェラ。サーベラス。】
使い魔トリオを喚んで訊いた。
「世の理から外れた者を救う手立ては無いの?」
ラゴスクスが重々しく、
「天罰を与えたのは神か主か誰か?」
メトシェラが神々しく、
「理そのものかもしれぬ。」
サーベラスが幽々しく、
「己の殻を破らなければならない。」
「麻衣子。聞こえた?誰のせいにしても、誰かにすがってもアカン。」
再び麻衣子の記憶が流れてきた。
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