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颯真は氷山の中心部に幽閉されていた。
一颯が微かに起こす暖かな風を肌に密着させて、氷の中を耐えていた。背中から抱くように自分の体躯を盾に颯真をバリアしてくれてた。
意識を保とうと一颯と色んな話をして、必死に気をまぎらわせていた。数日かひと月か。経過する時間を考えまいとしてて忘れてしまった。
【颯真、あと少しよ。頑張って。】
【ああ。ココから出たら密月(ハネムーン)だからな?】
【ええ。】
クスリと笑うと作業に集中する一颯。
「寒い、な。」
颯真がぽつり呟いた声をイズミが拾う。
「颯真。いい加減にしなきゃ死んじゃうわ。」
ギロッ!
鋭い眼光はイズミを落胆させる敵意。
パートナーになるか死か、二者択一を迫られた。颯真は第3の選択をするつもりだった。
「この状況見て何も思わんのか?お前アホだろ?仮に僕が死んでもムダさ。一颯じゃなきゃ満足出来ないんだ。決してガキにはわからないだろうな?」
「へえぇ。そんな颯真が好きだけどイライラしてくるわ。私が颯真より経験多かったらヤバいでしょ?かわいさ余って憎さ百倍って言うし。手に入らないなら届かないとこに逝けばいい。」
「バカか。一颯がお前に従うことはないのに。僕の心は、一颯。ひとすじ……なん、だ。」
呂律が回らない颯真は、限界が近いのを悟った。
「ふふっ。そろそろ毒が全身に回る頃合いね。」
にんまり笑うイズミは気付いていない。
氷山に細い細い亀裂が発生していることを。暖風を起こしているのはイズミの耳を錯乱するのが目的だということを………
ピシッ。
……ミシッ。
【熱風・旋風・疾風・猛風・風巻・魔風・台風】
パァンッ!!!!
颯真と一颯が空中に放り出されるように飛び出し、氷山が粉砕した。
【颯真!】
一颯の悲痛な叫び声が、深海の底へ、地平の奥へ、天の上へ一瞬に超音波さながらのクリア感で伝達された。
【風龍。】
シエロが、颯真と一颯を自身の結界内へと導いた。
私は颯真の毒消しを行うシエロを目の端に捉えると、紅鏡片手に憤慨するイズミへと向き合った。
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