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シエロに促されて、再び宵闇の彼方に来たんやけど、ドアが開かへん。
麻衣子どうしたんやろ?
「バロン。ドアを開けてくれ。」
ハリのある声でバベルが乞うように言った。
ギィイイ……
高層ビルの出入口のドアが軋むなんて有り得へんし。どんな構造しとるんや?
スキマ30センチから、チラッ。
「にゃ。」
バロンが顔を出した。
「このドア開けろよバロン。早く出てこい。」
かわいらしい白猫の態度やのに、バベルには全く効いてへんわ。
「じゃ、俺たちは帰るから。バイバイ。」
私の腕を掴んで、背中を向けた。
【いや。帰らないでバベル。】
「ムリ。俺をここへ閉じ込めて脱出するつもりだろう?浅はかなんだよアンタ。」
「閉じ込める?」
思わず呟いた私を見て、バベルが笑いかけた。
「ああ。宵闇の彼方に来れるのは闇属性持ちだけだ。こいつはバロンの姿をしてるが番人だ。」
ええっ?番人て?
「ユウコは建物の中で会ったんだろ?天龍もユウコの命に別状なけりゃ止めないし、麻衣子に会いに来たユウコは無害さ。俺に話があるんだろバロン。正体を現せよ?」
シーン。
沈黙が重苦しい。
見た目は白猫やのに、じわじわ感じるオーラは不気味やわ。
【バベル。忘れてしまったの?】
「その声で思い出したさ。この世界の境界線を守護する者。俺の忠誠心を煽って留まることを赦した者。白猫をどうした?」
ククク…
……ククク。
白猫は重低音さながらの暗い声で笑い始めた。
【バベルを慕うバロンを忘却させたのはナゼか解るか?】
んん?話し方がガラリ変わった。
「俺が弱いからだ。結果的に俺がバロンを殺めたのと同じだからだ。そうだろ?」
強がってるけど震えてる。
……心も瞳も。弱気なバベルの左手をギュッと握った。
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