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麻衣子は黒の魔導書を召喚した。
「バロン。早く行きなさい。幸せになってね。
って言うわけないでしょ?あと10秒以内に消えないと殺るわよ?」
【ま、麻衣子。】
さすがのバロンもタジタジやん。
「ほら喋れたんじゃない?にゃーにゃー言って、ごまかしてさ?ほんっとに腹立つ。」
【ありがとう。】
腕をブンブン振りながら、
「早く行きなさいよ?ったく。」
優しい目を隠せていない素直じゃない麻衣子やけど、白猫への情愛が確実に伝わってくる。
【麻衣子も幸せにね?バイバイ。】
チュッ!
麻衣子の額にキスをして、バベルの胸に飛び込んだバロンが、ヒトガタに変幻した。
か、か、かわいいーー!!
純白の髪がな、ふわふわくりっくりボブやねん。色白の透き通る肌にノースリーブとショートパンツは桃色で、華奢な両足には白革のロングブーツ。
「ユウコ。先に行って皆に紹介してくる。」
「せやな?お祝いしよな?」
「天龍。」
シエロに呼びかけたのはバロンや。
「天龍。麻衣子には力がある。異世界人だからか“宵闇の彼方”が認めたからか。」
ゆっくりと頷くシエロ。
「両方だろうな。颯真の叔母なら力が覚醒しても不思議じゃない。またなバロン。いや元“宵闇の彼方”番人カナタよ。」
バベルとバロンは、仲睦まじく転移していった。
「厳格な言い回しのバロンがバベルの前ではかわいらしい少女みたいやったわ。」
思わず呟いた私に、シエロがさらりと訂正した。
「少女?少年だと思うが。」
ええっ?
「バロンは男だ。」
「まぁ見た目は少女なんやし?」
「ふぅん。有羽ちゃんとは姑同士ね。」
え、あ、うん。互いの子どもみたいなもんやしな。
「麻衣子かて、すぐ見つかるわ。」
「そうね。宵闇の彼方の番人になり、特殊能力を得たのかしらね?不思議と私のパートナーが現れると解るわ。いつの日か、ね。
さぁ有羽ちゃん。何かあれば使いを寄越すわ。早く行きなさいよ?」
パチッ。
指を鳴らすと、麻衣子の姿が若返った。アバターみたいに髪や瞳の色は変わらず黒髪黒眼のまま。
めちゃめちゃキレイな20才頃の麻衣子に懐かしさを覚えた。
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