stage⑦

29/30
前へ
/212ページ
次へ
結局、白猫バロンの一途な想いに共鳴した元番人のカナタが発端やった。バベルの直感は正しかったわ。 白猫バロンが世界を変えたんや。 バベルが獣人族になったんも、 麻衣子が新しい番人になったんも、 元番人のカナタが恋に落ちたんも、 聖羅が呪縛から解き放たれたんも、 イズミが尸使いに弟子入りしたんも、 白猫バロンの意志ではないかもしれへん。 手動のオルゴールがメロディーを奏でるためにネジを回して動かすように。 湖の水面に雫が落ちて、その小さな波紋が湖全体へと広がってゆくように。 白猫バロン。 今頃天国でくしゃみしとるかな?それともゼウスの膝に乗って毛繕いしてるかもしれへん。 有り得るやろ? 白猫バロンにしか、私がこの世界を訪れる過程を知らんはずや。 功労者をみすみす見逃す、天界やないはず。 ……せやろ? 「にゃん。」 微かに聴こえた鳴き声は、決して空耳ちゃうと思うわ。 「ククククク……待ってるよ?」 あの忍び笑いはゼウスやん。天使らしい笑い方が出来へんのかな?あどけなさや清らかさが、ひと欠片も感じられへん。 天界てどんなトコやろ? 残念天使こと傍観者ゼウス。いつかシエロと天界へ遊びに行くからな? そのためにレベルもスキルも上げて、シエロを支えられたらええなぁ。 「報告は終わったし、家へ帰らせて貰う。」 突然、私をお姫様抱っこして空中へ舞い上がった。 ジロリ国王を睨んで、 「暫く邪魔をするな。いいな?」 凄んだシエロに誰も何も言えない。 【ユウコ。天界へ行かせたいが、地上に100年は帰れなくなるから、当分先な?】 甘いキスを髪にしながら囁くシエロの胸に、顔を埋めた。
/212ページ

最初のコメントを投稿しよう!

168人が本棚に入れています
本棚に追加