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シエロがドアを閉めた瞬間、ギルドの宿泊施設の部屋に転移した。
「おかえりユウコ。」
「ただいま。色々あってん。シエロ、あの、な?」
「何だ?」
密接したシエロのカラダから微かに香るオトコの匂い。色気ダダ漏れやんっ。汗ではないと思うんやけど体臭なんかな?
話したいこと、どっかに飛んでしもうたわ。
「私、汗臭いし。お風呂行くわ。」
「風呂でさっぱりしてから夕食にするか。」
ひええっ!今、顔を見んといて?
「ククク…どうした?時々赤面するな?」
アカン。顔を覗かれると余計色んな水分放出してまう。汗だけちゃうわ。
ギャー!!
肩を抱き寄せんといて、顔を近付けんといて。
「ほら、行くぞ。」
昭和のロボット並にぎこちなく歩く私に含み笑いしてる。
「シエロのイジワル。」
「ククク…ユウコがかわいすぎ。」
そんなん言うてもアカンわ。異性の免疫ナイんやから、マジご勘弁やで。
先に飲んでいるというシエロを残して、お風呂へ直行すると、湯に浸かって疲れを癒した。
あぁ~。心臓が飛び出そうやったわ。
よし。パートナーとは伴侶の事だって言ったよな。意味を思い出さな。
伴侶とは「一緒に連れ立って行く者」だから、使い魔のラゴスクスやフレンドのみんなも含むはず。
そういえば配偶者って意味もあったやん。ってことは、シエロは私をお嫁さんと思ってんの?
えっ!?よよよ嫁ぇえ!?
ブクブク…
………ブクブクブク。
湯の中に沈んでしまった。
やっと展開に頭が追い付いたわ。シエロは何を考えてるんやろ?特別美人じゃないし愛嬌もないしオバチャンやし、ないないづくしやで?
ドキドキするのは、シエロを異性として見てたからなんや。私ってイタイ女やわ。
今ならまだ間に合う。シエロみたいなスゴい人なら、私より相応しい相手がおるやろ?
この胸の疼きも、ときめきも、 今ならまだ封印できる。
失う恐さを知った私に寄り添う相手は必要ない。絶対我慢できへん。シエロが消えてしまったら、もう堪えられへん。
決別の意志を胸に、お風呂を飛び出した。
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