stage①

2/30
前へ
/212ページ
次へ
皆さん初めまして。私は今、必死に逃げ回ってるとこやねん。 実はな、鼻息荒い恐竜もどきが、ヨダレを垂らしながら急接近してて、もう必死やで。 携帯小説に登場する王道なシチュエーションに、驚いてるヒマないねん。 スーパーで買い物してから、原チャリで帰ってたんやけどね、信号を右折した瞬間、大きな落とし穴に落っこちてんで!ほんまやで。 落下速度ハンパなかったし、原チャリ乗ってるやん?身動きとれへん。そのまま着地したんやけど、気を失ったんやと思うわ。 あの原チャリ“お気に”やってん。きっと破壊されたんやろなぁ。ショックやわ~~。 でな?目を開けたら知らない草原の中にいるわ、原チャリは消えちゃってるわ、服装はゲームのキャラみたいなキバツな格好やわ、とんでもない状況やからな、今。 ギャオー!! ドスドス地面を揺らしながら近付いて来たのは、空色の恐竜もどき。獲物を捕らえた鋭い眼光は独特やわ。 って、獲物=私、、、? ヤバい!逃げな! 咄嗟に走り出したものの、慣れないショートブーツは足枷みたいに重たいし、フード付きのマントは肩が凝るしフードは要らんわ。 走りながらマントを脱ぐなんて無理やし? まち針みたいなお飾りの剣を腰に携えているけど、恐竜もどきに立ち向かうには、ほんまショボい。チャッチイ。 どうしよう!?息切れしてきた。 私がうら若き少女ならば、魔導師とか皇子様とか颯爽と助けてくれるはず。 だかしかーし。 見た目も中身もオバチャンやけど誰か文句ある? 文句があるなら、さっさと登場して恐竜もどきを一撃でやっつけてから言って貰いましょうか? 私は忙しいのよ!あと一時間もすれば介護サービスの車が戻ってきて、義父のお相手しながら夕食を作らなきゃいけないのに。 こんなヘンピなところで、恐竜もどきの餌になるくらいなら、元の世界に戻してよぉおお! 「誰か助けてぇええ!」
/212ページ

最初のコメントを投稿しよう!

168人が本棚に入れています
本棚に追加