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颯真は妖艶な微笑みで私を見た。
「今日から1週間。手裏剣の講師を務めるけど、辞めたくなったら、受付に伝言を残してから去ってね。」
なるほど。この人はドSなんやな。おしとやかな女性より、よっぽどやりやすいわ。
「改めまして、私がユウコです。この手裏剣をマスターしたいし本気やから。よろしくお願い致します。」
「いい目だわ。最初は体操を教えるわ。」
カラダに覚え込ませることで、手裏剣の基本的な構えに繋がるので、伸縮を意識して腕を伸ばしたり、膝を縮めたりした。
体操というよりダンスに近いな。リズム感がいるし、テンポも早い。45のカラダやったら、バテてるわ。
仮の姿は身軽で、めちゃめちゃ動きやすい。カラダを動かすことが楽しくて。
「違う。もっと足先まで力を抜いて?」
「肘を曲げたままってば。」
「バカ。何度言ったらわかるのかしら?」
「こらっ、こっちを疎かにしないっ。」
スパルタや。休憩なく3時間ぶっとおし。最後は怒られっぱなしやったわ。
お昼休憩は、市場でおにぎりを買って食べた。腹持ちいい米じゃないと、もたへんわ。カツ丼や海鮮丼は、最終日のご褒美にしよっと。
午後からも同じ体操の繰り返しやったわ。根気いるよな。集中せな手足が疎かになるし、カラダを痛めてしまうかもしれへん。
こんな時は歌うのがイチバン。
壱の型から肆の型まで一連の動作をしながら、脳内で昭和の懐メロや好きな曲を流してた。
パンッ!!
颯真は手拍子を叩き、私の動作を止めた。
「はい、今日はここまで。」
「ありがとうございました。はぁ~、しんどっ。」
その場で座り込んでしまうわ。
「ふふっ。筋は悪くないわ。また明日。」
私を置いて帰って行く颯真の後ろ姿に、見事な双翼が見えた気がした。
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