stage②

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颯真は妖艶な微笑みで私を見た。 「今日から1週間。手裏剣の講師を務めるけど、辞めたくなったら、受付に伝言を残してから去ってね。」 なるほど。この人はドSなんやな。おしとやかな女性より、よっぽどやりやすいわ。 「改めまして、私がユウコです。この手裏剣をマスターしたいし本気やから。よろしくお願い致します。」 「いい目だわ。最初は体操を教えるわ。」 カラダに覚え込ませることで、手裏剣の基本的な構えに繋がるので、伸縮を意識して腕を伸ばしたり、膝を縮めたりした。 体操というよりダンスに近いな。リズム感がいるし、テンポも早い。45のカラダやったら、バテてるわ。 仮の姿は身軽で、めちゃめちゃ動きやすい。カラダを動かすことが楽しくて。 「違う。もっと足先まで力を抜いて?」 「肘を曲げたままってば。」 「バカ。何度言ったらわかるのかしら?」 「こらっ、こっちを疎かにしないっ。」 スパルタや。休憩なく3時間ぶっとおし。最後は怒られっぱなしやったわ。 お昼休憩は、市場でおにぎりを買って食べた。腹持ちいい米じゃないと、もたへんわ。カツ丼や海鮮丼は、最終日のご褒美にしよっと。 午後からも同じ体操の繰り返しやったわ。根気いるよな。集中せな手足が疎かになるし、カラダを痛めてしまうかもしれへん。 こんな時は歌うのがイチバン。 壱の型から肆の型まで一連の動作をしながら、脳内で昭和の懐メロや好きな曲を流してた。 パンッ!! 颯真は手拍子を叩き、私の動作を止めた。 「はい、今日はここまで。」 「ありがとうございました。はぁ~、しんどっ。」 その場で座り込んでしまうわ。 「ふふっ。筋は悪くないわ。また明日。」 私を置いて帰って行く颯真の後ろ姿に、見事な双翼が見えた気がした。
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