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「あんな笑顔されたら断られへん。ズルいわ、イケメンブルーは。」
しっとりとした乳白色の湯に入ると、肌もカラダも生き返った。
「気持ちいい~~。」
明日はあちこち筋肉痛かと思ったけど、大丈夫かもしれへん。
暫く湯を堪能してから、山小屋の部屋に戻った。
木を半分に割ったような風情あるテーブルには、シチューとパンが、ほかほかの湯気が立ち、食欲をそそる。
「冷めないうちに食べるぞ。」
「シエロォ。メチャメチャ美味し~~!」
「そうか?手裏剣の特訓中は俺が作る。」
「ありがとう。特訓後は私も作るで。」
チュッ。
唇の端っこにキスを落とすシエロ。
「なっ、あの、食べてるやんっ。」
真っ赤になった私に満足そう。
「パン屑付いてた。」
「絶対ウソやん。」
◇◇◇
この世界では森や川、山や海にそれぞれ「主」が居るんやって。主が不在やと、その場所は廃れてしまう。
「ここは始まりの聖地の奥に存在する最古の森で“追憶の鍵”と呼ばれている。主は居るがワケ有りでな。」
使い魔のラゴスクスも、以前はバビロニア河の主だったが、今は別の者に座を譲り、私と共にいる。
「精霊が主でな。全ての植物の根源だと言われる気難し屋だ。風龍や土龍も頭が上がらんらしい。」
「へえぇ。龍が敵わへんってスゴいことやん。」
「大気と大地を育てるのは植物だからな。ラゴスクス同様人族嫌いでな。」
何となく想像できるけどな。森羅万象の理を外すのも、食物連鎖を荒らすのも人族やから。
「ユウコ。明日に備えて寝ようか?」
「ええっ!まだ早いんとちゃう?」
「昨夜寝オチしたのは誰だよ?」
ひいぃっ!シエロの瞳がギラギラしてるやん。
「ほら、寝室に案内するから、おいで。」
有無を言わさぬド迫力に、笑い出してしまってん。
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