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2階には寝室と納戸のドアが左右に一つずつ。
寝室のドアを開けると、白いレース生地でベッドを覆っていた。
目隠し?日除け?
早速シエロはカーテンを手で払い、私の腰に回した手をグッと押して、ゆっくりとベッドに横になった。
銀色の瞳がゆらめく。シエロの瞳ってキレイやな。
「この家って私のため?」
「ユウコと俺のため。人族が大勢いる気配に慣れないのは俺だ。虫や獣の鳴き声や羽音は気にならんが、ユウコ以外の人族は苦手なんだ。」
「ありがとう。ここ落ち着く。シエロに貰いっぱなしで、私はちゃんと返せてる?」
「あほぅ。毎日おはようおやすみって俺に言うなら、この距離じゃないとな?」
煌めく瞳は月のよう。ずっと見ていたい。
「ユウコ…おやすみ。」
瞼に唇を押し当てる優しいキス。
嬉しいけど焦れったい。初めて私からシエロへキスをした。
「シエロ、おやす……んんっ。」
熱くて甘い返り討ちに合ってしもうたわ。
◇◇◇
今日で特訓6日目。
初日から同じ型ばかり繰り返してる。肆の型から拾弐の型まで増えたものの、手裏剣には一度も触れていない有り様。
ノンキな私も、胸を掠める不安を振り切って、踊るように泳ぐように、カラダを動かす。
パンッ!
「ユウコ。陸の型でふらついたら怪我をする。腕を疎かにしては危険よ。はい、もう一度。」
「はいっ!」
アカン。脳内のBGMは巨人の星や。試練の道はここにもあったで。
壱の型からやり直す。カラダに覚え込ませるリスクは、おざなりになってしまった場合、気付かないという怖さかもしれへん。
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