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「いいのか?」
チラチラと様子見する恐竜もどきにイライラしてきた私は、勢いよく一歩前に出て、両手で剣を差し出した。
「あなたに必要なんやろ?あげる。」
「ありがとう。」
大きな前足の爪先で恭しく受け取った。
!!!!
突然、閃光を放って視界が遮られた。眩しくて顔を覆うように腕で庇った。
やがて神々しい光は波が退くように消えていくのが感覚でわかる。
抑えた腕を外すと、長身の男性が妖しく微笑んでいた。
「嘘ぉ!爽やかイケメン誕生やん!」
銀色の瞳はそのままやけど、灰色と呼ぶにはキラキラ光ってる。紺色の長髪をなびかせている姿は、戦隊ヒーローに登場する冷静沈着なブルーを彷彿させた。
「俺は空を司る龍だ。君から譲り受けたのは、俺に不可欠な宝玉。手に入れる方法は偶然発見するしかない逸品だ。快く譲ってくれた君には本当に感謝している。」
「君なんて言わんといて?こしょばいわ。私は有羽子( ユウコ)。45才のアラフォーやで。あなたの名は?」
「ユウコ。私には名前はまだない。」
夏目漱石?猫やなくて龍やけど。
「アラフォーって何だ?45才?どう見ても20才くらいにしか見えんが?」
「んもう、どの口が言うてんの?ウマイなぁ~!」
思わず右肩をバシバシ叩いた。
「目元のシワも頬のたるみもハンパないで?」
「どこが?」
こてん、と首を横に傾げる様子は、自宅にいる犬のバベルそっくり!
「自分の目で確かめろよ。ほら。」
前方に見える湖の畔に案内された。覗き込むように湖を見つめると、、、?
「誰なんコレ!?私ちゃうしっ!」
水色のストレートボブ。銀色の瞳は龍と同じ。シワもたるみもなくなってるし、どう見ても20才前後のオンナのコやん。
端からみたら、女優さんみたいやで!?
「これは夢?」
「夢現ではない。現実だよユウコ。」
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