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湖に浮かんだ知らない人は自分なんだと言い聞かせていると、どこかで見覚えあるような気がした。
見たことあるんやけど、ちっとも思い出せへん。
あきらめて湖から目を逸らした。ふと空を見上げてみると、薄紅色の空が広がっていた。
微かな記憶を手繰り寄せてみると、昨夜の会話が脳裏に過った。
◇◇◇
「お母さんのアバターどうするん?」
「かわいらしいのがええわ。ピンクって柄ちゃうし、水色の髪、銀色の瞳にするやろ?アイテムは無料ガチャで当たったレアの杖を装備しよっと。」
「ええなぁ~お母さん。そのレアアイテム、色も虹色やん。虹色アイテム自体シークレットアイテムやから、それスゴいんちゃうん?」
「ほんま?お母さんは普段から運悪くないねん。」
「良いこと悪いことの差が激しいけどな?」
「せやねん。凹凸スゴいけど幸せやで。お父さんに出会えたし子宝にも恵まれて……
「はいはい。オンラインでチーム組むから職種は私と被らんといてや?」
「わかったわかった。じゃお母さんは何にしたらええの?」
「私が魔導師で彼氏が剣士やから、それ以外なら好きなんにしたら?」
「じゃ、コレにするわ。オモロイし背中に装備できるやん。」
「へええ。大胆やな。実際には扱いにくそうやけど、飛び道具やから無敵ちゃう?」
◇◇◇
娘と笑い合っていたのは、スマホの無料ゲームのアバター登録だった。皆で協力していくゲームで5人同時に戦えるのが魅力だと言っていた。
まんまアバターやん。
ピンクの髪にしなくてヨカッタ!!
んん?走りにくいと思ってたけど、もしかしたら、、、?
湖に背中を向けてみると、案の定、十字形の大型手裏剣が装備されていた。
実際は手裏剣というよりブーメランだ。水面に映る漆黒の武器は、マントに同化して模様に見えた。
じゃ、ここはゲームの世界なん?ほんまに?
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