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状況が目まぐるしく変化していることに付いていけない。見た目は20才でも中身は45才のままなんやで。
ちなみに初期設定の服装は膝上の白いワンピース。風が吹くと、ふんわり揺れる感覚は久しぶりで、そわそわしちゃう。義父の世話やパートでは動きやすいズボンやし。
実際に着心地なんて考えてアバター設定するわけないやん?
ウエストポーチとショートブーツは銀色でお揃いにしたけどアバターポイントを奮発した気がする。走りにくいけど足は痛くない。
フード付きのマントは黒色がよかってんけど、アバターポイントが足りなくって泣く泣くグレーにしてん。まぁ黒色やったら暑いし汚れ目立つし、グレーで正解かもな。
「ユウコ。」
龍が私に話しかけた。落ち着くのを辛抱強く待っていたみたい。
「俺に名を付けて欲しい。」
「名前を?どうして?」
「ユウコが俺の主だからだ。宝玉の持ち主に従うのは当然だろう?」
ゲームではクエスト消化しながらレベルアップしていき、ボスと戦う際にパートナーを召喚する遊びだったと思う。
龍はメチャメチャ強そう。やっぱ私はラッキーかもしれへん。
「わかった。ええ名前考えるから、少しだけ待ってな?」
空色の体躯に銀色の瞳をした龍。空のイメージでイケメンに似合う感じやと、、、。
「あなたの名前はシエロ。スペイン語で“空”という意味やけど、どう?」
「ありがとうユウコ。俺の名前はシエロ。よろしくな。」
差し出された右手を掴んで握手を交わしたら、光が私達を包み込んだ。
右手の中指が輝いている。
指環だ。1.5㎝位のビー玉に似た珠が付いている。水色をベースにしたオモチャの指環みたい。反射した光を帯びると虹色にキラキラしてるのが、まち針みたいな剣先にそっくりだった。
「覚えておけ。俺はユウコのパートナーだ。」
「パートナー?」
「そうだ。一緒に連れ立って行く者だ。この指環は俺とユウコの契約の証だ。」
当分元の世界には戻れへん。ならばシエロと行動を共にするのは自然な流れやな。
「わかった。この世界にはホテルとか宿泊施設はあるん?戸外はもう充分やし、お腹空いてきたわ。街中に移動できる?」
「心得た。………転移。」
ギャー!!!
高速絶叫マシーンに乗った浮遊感に雄叫びを上げた私は悪くないっ。
緊迫した糸がぷつりと切れたように、私の意識はブラックアウトした。
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