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目が覚めると、見慣れない一室のベッドに横たわっていた。
8畳程の部屋に左右にベッドが1つずつあるシンプルな間取り。一方を私が使い反対側にはシエロが腰掛けていた。
「大丈夫か?」
憂いに満ちた表情をしたシエロが、私の枕元に駆け寄った。
「うん。ここ、は?」
「所属ギルドの宿泊施設だ。ユウコはギルドカードを持ってないだろう。」
「どうして気付いたん?」
「本来ギルドカードには小さな魔石が嵌め込んであるが、無反応だからさ。」
「そうなんや。実はな?」
シエロに自分のことを話した。昨夜のアバター登録のままの容姿で、この世界に来てしまったことを…
「ユウコは異世から来たのか。」
差し出された筒状の容器は水のようだ。ごくごく飲み干して、気分爽快になった。
「迷惑かけてごめん。船酔いしたみたいな感じやわ。」
「俺も悪かった。転移して気分を害する者も多いのを忘れていた。まずは腹ごしらえからだ。動けるか?」
ふと離れた家族への夕食を案じた。お義父さん大丈夫かな?娘がバイトから帰るまで、我慢できるかなぁ?
「ユウコ。異世から来たことはヒミツだ。わかったな?おーい、ユウコ?」
「え、は、はいっ。皆、ちゃんと食べてるかな?って気になっててん。」
「今は自分のことだと思うが。皆が心配なら皆と再会した時、胸を張っていられるようにしないとな。」
その通りや。今は何も出来ないし。
「ジタバタしてもしゃーない。切り替えなアカンね。ありがとうシエロ。」
レストランというより社員食堂みたいな雰囲気で。緊張感が解れていくのがわかるし、話し声に混じって笑い声が響いて活気がある。
って、人かな?背中に翼があったり獣耳や尻尾が揺れてたり?肌も様々な色だし、これはハロウィンの仮装パーティーやわ。
「お待たせしました。」
美味しそうなパエリアと鍋ごとスープを置いたのは気さくな料理人だった。
「美味しいっ。魚介類は新鮮やし米に魚介類の出汁が利いてる。スープは香辛料がふんだんに使われてるのに喧嘩せず引き立て合う旨味。ええ仕事してはるわぁ。」
心配してくれてたシエロも、私の食欲を見て安心してた。いつも時間の合間に1人で食べてた食事より数倍美味しいわぁ。いやぁ~眼福、満腹。
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