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「なっ!ど、何処だ?」
困惑して遠くを見ている内に敵兵の後方に回り込む。
……上手くいった。
後はビビらせるだけだ。
一気に間合いを詰め、敵兵が振り向く前に剣を首に当てた。
「ひっ!」
「動くな、……お前に頼みたい事があるだけだ」
「……頼み、だと?」
ゴクリと唾を飲み込む敵兵。
抵抗を無駄と思っているのか、何もしてこない。
「簡単だ。……斬り足りないんだ。だから、お前の声で仲間を起こしてくれないか?……大丈夫。起こしたらお前は逃がしてやる。……別にお前の悲鳴でもいいけどな」
戸惑った様子を見せたが、命が惜しいようでゆっくりと頷いた。
「てっ、敵襲っ!昼間の奴だっ!」
少しして騒乱に包まれた。
簡易的な高台から鐘の音が聞こえる。
遠くに足音が聞こえてくるが、恐らく他の巡回兵と見張りの兵だろう。
「よくやった。さあ、行け」
困惑した表情を浮かべる敵兵。
まさか本当に生かして貰えるとは思っていなかったらしい。
数歩歩いてこちらの様子を伺っていた。
「なんだ、逃げないのか。……じゃあもう一つ頼まれくれ。……今度は千じゃあ足りねぇ、ってな!」
狂って斬り足りない事をアピールすると、顔を蒼白にして後退りしながら去っていく。
「……うーん?」
手応えは感じたが、これで良かったのか?
少し疑問が浮かぶが、少し待つと俺を囲む兵で正しかったと判断する。
大雑把に囲む敵兵を見ると、今いるだけで二百はいるだろう。
その事に何故か強く喜びを感じた。
そして、意識していない筈なのに闘気の色がまた赤黒く染まり、昼間よりも多く立ち昇る。
その闘気は少しだけ獰猛に敵を求めている気がした。
良くわからないが、好都合だ。
昼間よりも身体が軽いし、失敗する気がしない。
そう思って剣を強く握ると、何かに怯えていたのか敵は後退りをした。
「さあ、楽しませろ」
そう呟いて敵の集団に突っ込む。
闇夜に悲鳴が響いた。
その日エルドナ帝国の先鋒隊は恐怖のどん底に落とされたらしいです(他人事)。
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