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さあ覚悟は出来た。
死ぬ覚悟はとうに出来た。
惚れた女を守ることに命をかける事に躊躇うな。
前を見ろ、剣を握れ、死に近づき自らが死神になる事を望め。
けれども、戦力差は絶望的。
「だからどうしたっ!?」
自分に発破をかけ、鼓舞をする。
領主の兵が俺を見ていた。
「生を捨てろっ!死に飛び込めっ!正義なんてねぇ大義名分を許すなっ!俺達が命をかけろっ!じゃないと、てめぇらが逃げた後の王国を考えろっ!さあ行くぞ、胸張って共に死ねっ!!!」
「ウォ、ウオォォォォォォォォォォ!!!!!」
全力で鼓舞した結果は大成功だろう。
領主の兵どころか他の王国兵までもが士気が上がった。
心強く頼もしい存在だ。
でも本当は足の震えが止まらない。
皆だってそうだった。
それでも勝利を、祖国を守る為に、愛するものを守る為に剣を握るのだ。
しかし敵の攻撃を脅威には感じなかった。
凄く遅いのだ。
まるで俺だけ別世界にいるような感覚に陥る。
重い斬撃だが、それはしっかりとした鎧が重量をあげているからだ。
でも動きが見えていれば、簡単に受け流しカウンターを狙える。
冒険者風の軽装備を着ているものなんて一人もいない。
皆命が惜しい。
だから鎧を着る。
それこそが命取りになるとは思わずに、その命を散らしてく。
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