第二話 狂戦士(ベルセルク)が誕生した日

4/4
51人が本棚に入れています
本棚に追加
/181ページ
「アイツ……到達者だったのか?」 「いや、なったのか?」 「戦局は変わるのか?」 「あの色……初めて見たぞ」 あんま変わらない。 やはり俺が求めていた答えは無いようだ。 さて。 我が国を守るために、敵を削るだけ削りますか。 そう思って気合を入れると、口元に笑みが浮かび、闘気の放出量が上がった。 そこで漸く気づいた。 闘気が赤黒い蒸気のような色に変わっていることに、今更ながら気付いた。 「ま、まだ戦う気なのか!?」 「ひぃ、い、命だけは?」 敵兵の怯えように落胆する。 どうしてもこの力を振り回したい衝動に駆られる。 どうしようもなく、気分が良かったのだ。 その衝動を開放し敵兵を切り刻んだ。 鎧や肉や骨を断ち切る感触に不快感を感じることなく、右腕を両断した。 悲鳴が辺りに響く。 その悲鳴が終わる頃には、また次の悲鳴を求めた。 それこそが、俺の求める悦びと言わんばかりに、獲物を求め続けた。 一方的な虐殺。 殺戮といっていい。 俺が我に返った頃にはその現場に一人立っていた。 敵兵は一兵たりとも居なかった。 既に遠くへと逃げていたのだ。 改めて辺りを見渡し驚愕した。 そこには数百を越える屍があった。 「俺が……やったの、か?」 余りの出来事に絶句する。 記憶によれば、俺一人でこの屍を作り上げたらしい。 だが、なんというか、戦っていた自分が遠く感じる。 映画で出てくる登場人物が乗り移ったような錯覚すら覚えた。 思わず頭を抱えた。 「畜生……あんま参考になんねぇじゃねぇか」 今考えるのは仲間に恐れられることでも、それを恐れる恐怖でもない。 一度の勝利に浮かれずに、今を見つめ直して次も大戦果をあげる事だ。 それを考えている俺の耳に入ってきたのは勝鬨を上げる声だった。 同じ領地の先輩方が駆け寄ってきて、俺を褒めちぎった。 呆気にとられながら、先輩方が砦へと俺を連れて行きながら賛美の嵐。 抵抗する気力すら湧かず、流されるままに足を進めた。 そんな俺が最後まで見ていたのは、自分が積み上げた屍の数々。 少しだけ希望が見えた気がした。
/181ページ

最初のコメントを投稿しよう!