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生徒会長殿は、呆れてため息をつく。お前みたいに完璧にはいかねーってモンなんだよ。フンッと俺はホコリを集めていると、耳に焼きついた華奢な声が聞こえてくる。
「皆せんぱ~い!」
こ、この声は……俺の女神兼アイドル、エリスちゃん!! 振りかえると、エリスちゃんは生徒会長にその可憐な笑顔を向けていた。
「おや。何か用か?」
「はい、ちょっと生徒さんの身だしなみについてお話がありまして~」
「ほう。丁度らしいのが一人いるな」
そして、生徒会長とエリスちゃんの視線が俺を向いた。いやいやいや! う、嬉しいけどっ!! 俺を見てくれるのは嬉しいけれど、きゅ、急に俺の方を見るなよ恥ずかしいだろっ!!!
そんな俺の気持ちなど知らず、エリスちゃんは俺に一歩一歩確実に近付いて行き、俺の顔をじっと見つめて一言。
「あ、あの時のっ!」
……覚えていてくれただと……!? 神なのか、神のお導きなのか! 急に感情がこみあげてくる。何故か出そうな涙を堪えて目をぎゅっと瞑る。
「知り合いか?」
「はいっ! 前怪我をしてたので、ちょっと。皆先輩のクラスメイトさんだったんですね。……それにしても」
エリスちゃんは俺の顔へとその細い手を近づけると、その美しい手を、俺の目元に触れさせた。
「この眉はいけませんね~。本当は良い人なのに、みんなが怖がっちゃいますよ? あ、このズボンもだらしなく見えちゃいますよ~」
「そうだよな。私もそう思っていたんだ」
この眉はいけませんね。いけませんね。ませんね……。
このズボンもだらしなく見えちゃいますよ。見えちゃいますよ。ますよ……。
彼女の言葉が、俺の脳内から離れなくなってしまった。
「おーい。おーい」
生徒会長の言葉に反応することも出来ない程、彼女の言葉が俺に酷く突き刺さっていた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日、俺は何時ものように学園に移動していた。しかし、俺を見るや否や、既に学校に来ていた生徒達が皆二度見する。ああそうか、そう言えばまだ朝の六時半だからな。
教室へと入ると、生徒会長は黒板に日直当番の名前を書いていた。
「はよ」
「なんだ、今日は早いな。……って君、随分変わったな」
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