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カシャッ
どこかでフラッシュがたかれた。
それをきっかけに波紋のようにフラッシュの波が広がっていく。
向けられるたくさんの目。
衆人監視の中少女は呆然としていた。
「撮らないでください」
青年が鋭く、睨んだ。
そそくさとケータイをポケットにしまう人々。
そしてそのまま、やってきた電車に逃げるように乗り込んで行った。
ガタンゴトン……
電車が何事も無かったかのように発車した。
下車してきた人々は、チラチラと見ながらも皆、改札に向かっていった。
さっきまでのざわめきが嘘のように静寂を取り戻した朝のホーム。
また、次の電車を待つ人がやってくる。
やっぱり、他人には興味はないようで、チラ見しては声をかけることなく去っていく。
彼は少女の腕を引っ張って無理矢理立ち上がらせ、ベンチに座らせた。
やはり少女はぼーーっとしていた。
なにも、映していないかのような目をして。
「大丈夫?」
彼の問いかけにも少女は答えない。
「ーー聞いてる?ねえ」
まるで何も聞こえていないかのように。
「ーーねえ!」
パンッと青年が少女の目の前で手を打つ。
それでやっと我に返ったように少女は顔を上げた。
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