姿違いて

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ほんの少し、人とは異なる姿。 兄弟とて、その親とて望んだ訳ではない姿。 父親は我が子等の産まれた姿を見て、ひっそりと姿を消した。 十の頃まで育ててくれた母親は心労が祟ったか、ある日突然倒れてそのまま帰らぬ人となった。 人だと知って、普通に接しようとする者も居るにはいた。 だが愛想笑いを浮かべる裏には、必ず汚い思惑が潜む。 (こんな異形と付き合う自分は凄いだろう) (化け物とすら付き合える俺は、度胸が有り器の大きな人なのだ) (見世物に売れば金になる。上手く言いくるめてやる) 故に、時が無惨に仮初めの面の皮を引き剥がす。 長く付き合えば付き合う程に、下げずみを、哀れだとせせら笑う心が見える。 心無い人々に、意図せずとも苛め抜かれた彼等は、最早誰かを思い慕う事はない。 その心に在るのは空虚な闇。 空っぽで、如何なる愉悦を得ても満たされない。 自身等の姿故に、愛した者を失ったから。 姿など些細な違いよと告げた信じた者に裏切られ続けたから。 力無き人は、彼等の目にとまらぬ事を神仏に祈るしか無くなった。
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