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「あの、それよりも林田先生。ぜひお知恵を拝借したいんですけど」
覚悟を決めて桜太は自ら話しかけた。このままでは延々と千晴スカウトをし続ける。それでは後に千晴から殴られるし時間は無駄に過ぎるだけだ。
「おやっ?君は上条女史の御子息だね!いやあ、世間の狭さを実感するね。君の母君にはこの間お世話になったばかりだよ」
林田は今度は桜太を抱きしめる。この過剰なスキンシップは何を意味しているのか。アイドルオタク以外にも未知な部分が多い。
「く、苦しい」
しかし問題はそこではない。迅が苦しんでいた理由が解った。相当な力で抱きしめられる。桜太は容赦なく林田の股間に膝蹴りを入れた。
「うふっ」
林田はよく解らない声を出して桜太から離れた。何だか蹴った桜太が恥ずかしくなる声である。
「もういいですか?先生」
見ていた莉音が飛び跳ねる林田に冷たい視線を送る。
「ああ。ごめんごめん。何やら楽しい実験を計画しているんだったな。何をするんだい?」
林田は内股になりつつ桜太を見た。変人でもそこが急所であるのは変わらないのだ。
「いや、実験を計画しているのではないんですよ。一昨年の実験中に起きたという謎の光の原因が知りたいんです。どうして実験中に光が起きたか解りませんか?」
桜太は僅かに林田から離れつつ訊く。また抱き付かれたら股間以外を狙わないとなと密かに計画する。
「一昨年の実験中?あれは俺の人生の中で最高にクレイジーかつ知的刺激に満ちた実験の数々があったな。言ってみれば実験の狂想曲。知の集大成だ。そんな時に光っていたとは、面白い実験を逃したものだ」
林田の言い分はまったく役に立たないと明言しているようなものだ。そもそも最高にクレイジーとはどういう意味なのか。亜塔が指摘したように実験をしていたのはマッドサイエンティスト集団か。
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