一章 ほとぎ ひなの日常

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「若王子君……」 「あっ、俺の名前覚えててくれたの。忘れてると思ってた」 顔が見れない。8倍速で除夜の鐘をついたみたいに、いつまでたっても鼓動が止まらない。 「覚えてるに決まってる!!」 「……嬉しいよ」照れてる。 「いや、これは言葉のあやで……若王子君はどうしてここに?」 「俺、電車通学なんだけど定期忘れちゃって。切符買うの、なんか嫌で。損した気がするんだ」 あまりにも赤面して、前後不覚になった。 若王子君との夢のような時間が、夢になってしまった。 耳に言葉が入ってこないで、若王子君が話している内容をうんうん言うだけ。 でも、性格の話しはした気がする。正直に話す事が大切だと、若王子君に言ったような。 「正直って、本音って事?ほとぎさん」 「違うんです。単純なだけだから……でも、私シンプルに一個守っていけたらって思うんです。それくらいしかできなくて、私」 「……ほっときたくないな、本当にカッコいい」 みたいな話しをしたような覚えが。
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