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一章
午後1時を少し回った、駅前の公園。
まばらに人がいる。
公園に植わっている桜は、葉桜に変わり、皐月のはじまりを告げる。
木の下のベンチの近く、2人の不良が女性に絡んでいる。
女性は不良の目線に睨みを利かせている。
「なあ、さっきから睨みつけんのはやめてくんねえか……一体お前は何がしたいんだ」
後輩らしき坊主頭が後に続く。
「安藤さんの言う通りだよ。ベンチでのんびり座ってたのに」
目つきの悪い女は安藤さんと、呼ばれた金髪のチャラチャラした風の男に言い放つ。
「猫にいたずらするなよ」
「別にいいだろ、野良じゃねえか」
不良は及び腰になる。
普通に学校をふけただけで、悪さするつもりなんてさらさらない。可愛い女だが、頭のおかしい奴に関わるもんじゃない……
「そういう事を言ってるんじゃ……」
「おー、球磨(くま)さんだ。学校サボってなにしてるの?」
公園の外から走って来た、制服姿の男子高校生が、柔和な笑顔で仲裁に入る。
シトラスレモンの香りがふんわりと周囲を包む。
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