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同じクラスの若王子景清君は、名前の通り王子様。噂で聞くと、大きなグループの息子さんらしい。
スラッとしていて、均整のとれた体。清潔感のある少し長めの黒髪。
モデルになれる位、整った顔。
そんなの、関係ないけど。
誰でも気さくに話しかけて、気にかけてくれて。
私にも、挨拶してくれる。
もちろん、人気があるからライバルも多い。1番のライバルは、浅田さんだ。
彼女もクラスの人気者。彼とお似合いのスペックで、友達も多い。
勝負にならないから、はなからみんな戦いを挑まない。私もそう、遠くから眺めているのが精一杯だった。
でも、今日どういう訳か若王子君がこちらを見た。
勘違いとは、思うけど……思わなくても良いのかも。
「はぁ」
なんてね、偶然。放課後のチャイムが鳴り、私は家に帰る。
「部活入りたかったなぁ」
あ、授業でさされた以外で初めて声出した。
とぼとぼと家に帰る……。
友達が欲しい……でも、一歩前に出ない。
そんな、そんな普通の日々。でも、その日の帰り道は違った。
丘の上に立つ学校から帰ると、当たり前だけど坂を下っていく形になる。
勾配は緩やかで、杉並木のある広々した一本道だから、好き。
ざわざわと、緑が揺れて涼しさを感じられる。
……夏になったら、しんどくてそれ所じゃないけど。その前に自転車買っちゃうけど。
杉並木を抜けると、十字路に出る。十字路を渡って少し歩くと、皆星学園前駅に到着。
私はバスだけど。
塗装が新しくなったバス停で待っていると、前方から走ってくる人がいた。
つやつやした黒髪に、均整のとれたスタイル……
……えっ、嘘。若王子君!?
でも……私なんかに。
「おーい、ほとぎさん。待った!」
私の後ろに並ぶ……。嘘じゃない、でも嘘みたい。
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