一章 ほとぎ ひなの日常

4/13
前へ
/91ページ
次へ
同じクラスの若王子景清君は、名前の通り王子様。噂で聞くと、大きなグループの息子さんらしい。 スラッとしていて、均整のとれた体。清潔感のある少し長めの黒髪。 モデルになれる位、整った顔。 そんなの、関係ないけど。 誰でも気さくに話しかけて、気にかけてくれて。 私にも、挨拶してくれる。 もちろん、人気があるからライバルも多い。1番のライバルは、浅田さんだ。 彼女もクラスの人気者。彼とお似合いのスペックで、友達も多い。 勝負にならないから、はなからみんな戦いを挑まない。私もそう、遠くから眺めているのが精一杯だった。 でも、今日どういう訳か若王子君がこちらを見た。 勘違いとは、思うけど……思わなくても良いのかも。 「はぁ」 なんてね、偶然。放課後のチャイムが鳴り、私は家に帰る。 「部活入りたかったなぁ」 あ、授業でさされた以外で初めて声出した。 とぼとぼと家に帰る……。 友達が欲しい……でも、一歩前に出ない。 そんな、そんな普通の日々。でも、その日の帰り道は違った。 丘の上に立つ学校から帰ると、当たり前だけど坂を下っていく形になる。 勾配は緩やかで、杉並木のある広々した一本道だから、好き。 ざわざわと、緑が揺れて涼しさを感じられる。 ……夏になったら、しんどくてそれ所じゃないけど。その前に自転車買っちゃうけど。 杉並木を抜けると、十字路に出る。十字路を渡って少し歩くと、皆星学園前駅に到着。 私はバスだけど。 塗装が新しくなったバス停で待っていると、前方から走ってくる人がいた。 つやつやした黒髪に、均整のとれたスタイル…… ……えっ、嘘。若王子君!? でも……私なんかに。 「おーい、ほとぎさん。待った!」 私の後ろに並ぶ……。嘘じゃない、でも嘘みたい。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加