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「つぼっち!超ウケる!」
週末、同期の薫に事の次第を話したら、容赦なく笑われてしまった。この子もはっきりしたタイプで、私が紗希ちゃんを憎めないのは、どこかこの薫に似ている部分があるからだろう。
「もう、爆笑してる場合じゃないんだって」
「いやいや、ここは笑うトコでしょ。確かにクミはお昼とか一人だから一見ボッチに見えるしねぇ」
そっちの方が響きましたか。
「だって電話番あるし…」
皆がお昼に行ってる間はやっぱりこれまで一番下っ端だった私が電話番になるべきだろう。
「ていうか入社たかだか四年でお局様呼ばわりされるのかってちょっと凹んだんだけど」
「それは私も地味に凹むわ。ウチの新人は地味子ちゃんでよかった。間違ってもロッカーで毒吐くタイプじゃないもん」
「ああ、綾乃ちゃんだっけ。素直そうだもんね」
「そうそう、手際は悪いけど一生懸命だから微笑ましいわよぉ」
いわゆるドジっ子属性の綾乃ちゃんは、いつも不安そうに眼鏡を触っている。黙っている薫は一見怖そうだから、綾乃ちゃんはさぞビビっている事だろう。
「でもお局様って言ったら岩城さんの方がそれっぽいけどねぇ。まぁでも年が違い過ぎるからかな。クミは教育係だから指導する回数多いし仕方ないんじゃない?」
ま、ですよねー。
「それよりさ、その紗希って子、クミのとこの新人君……なんて言ったっけ」
「湯北君?」
「そうそう、その湯北君に凄いアプローチかけてるんだってねぇ」
「げ。薫のトコまで噂飛んでるの?マズイなぁ」
「どうなのよ、結構凄いの?」
「さすがに仕事中はそんな素振りないわよ。せいぜいお淑やかになったり湯北君が居る時にはいつもより頑張ってるくらいで」
「へぇ、それくらいの分別はあるんだ」
「そりゃあね。あからさまに変な態度とられたらもっとキレてるわよ。その代わり湯北君に気がありそうな子が来たら凄い勢いで睨んでるけど」
アマゾネスですから。
「若いなー」
「ま、今のところ実害はさほどないし、ユナちゃんも抑えてくれてるから別にいいんだけどね」
「湯北君、新人達の中でも人気あるみたいだから面倒な事にならないといいわね」
「それ、ちょっと頭痛い」
湯北君自体には問題ないんだけど、同期の女の子達の間では湯北君を巡って既にちょっとギクシャクしているみたいだし。
「ホント、他所でやってくれないかな。会社ではそういうの止して欲しいよ切実に」
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