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――居なかった事
親、兄弟、友達、その他今までリアルで出会った人全員。
俺ら転生者の全ての記憶が抹消されているらしい。
痕跡までも綺麗に消して、そのものを無かった事にしたそうだ。
一応『神』と言うだけに万能だ。
ただ……認めたくない事実だ。
「それ、本気で言ってんの……?」
思ったより低い声にレーナが肩を震わせる。
「こ、幸……?」
『仕方のない事だよ。死んだのに遺体が行方不明……現代じゃ大騒ぎでしょ?』
それでも、やっぱり納得はできない。
「っざけんな!俺の生きた25年間を全部無かった事になったんだぞ!」
事後なのは分かっている。
でも、どうしても俺は。
『仕方ない』で済ませられない……
「まだやりたい事、いっぱいあったんだ。親孝行して、レーナと結婚して、隠居したら老後まで2人でこたつで膝を突き合わせながらモン○ンとかして「そっちに紅玉出ないのぉ」とか言いながら周回してさ……」
「幸……」
途中からうるうる涙目が苦笑に変わったレーナ。
おい、ここは泣くとこだぞ?
『ま、まぁ死なない世界なんだから肩を並べながらレベリングすると良いよ』
おい、なんだその妥協案は……
「とにかくリアルにやり残した事が多すぎるからさ……ログアウト出来ないの何とか出来ない?」
結局はこれだ。
『現実逃避』俺が一番嫌いな言葉だ。
昨日まで普通に生きてて将来のために仕事して貯金して次のデートはこうしたいとか考えて生きてきた。
それが死んだからと働きもせずゲームの3D世界で生きろだなんて親が認めても絶対にしたくない。
それこそ平面にかじりつく根暗のようで……絶対嫌だ。
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