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「ねえ、あなたの友達、どうしちゃったの?」
そう、すみれが訊いた。
カンナも亜香里もぼうっとしていて、まるで魂が抜かれたかのようだった。
気味が悪かった。
十二時を回る頃、すみれがカウンター奥にいる男に訴える。
「あのう、この二人が気分が悪そうなので帰ります」
亜美はまだ帰りたくないが、ここに一晩中いるほど居心地はよくない。
亜美も立ち上がった。
するとすぐに奥からさっきの二人が出てくる。
「あ、この二人はすぐには歩けないよ。ここに寝かせておけば朝には元に戻る」
その言い方には、この二人が放心状態になった原因を知っているようだった。
さすがの亜美も薄気味悪くなる。
男たちが急に豹変し、亜美とすみれの腕を掴む。
そして無理やりそのパブの地下へ連れていかれた。
「悪く思うなよ。他の子みたいに吸い取らせればよかったんだ」
男の一人がそうボソッと言った。
吸い取るってなんのことだろう。
なぜ、亜美とすみれは平気なのか。
それほど広い店ではなかったのに、その地下の通路はかなり歩いて行っても壁に行きあたらなかった。
それどころか、いつのまにか、ごつごつした岩で覆われた洞窟のようなところを歩いていた。
洞窟を出ると、すべてが真っ白な霧に覆われていた。
奇妙に思ったのは、それまでいろいろ話していた男たちが何も言わなくなったこと。
ただすみれと亜美をしっかりと捕まえて、霧の中を黙って歩いていた。
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