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やっとこの頃にはさすがの亜美にもおかしいとわかった。
すみれも不安そうにしている。
しかし、男たちが恐ろしくて抵抗できないでいた。
やがてその霧が、夜の暗闇に変わった。
誰もいないはずなのに、辺りはなんとなく、ざわざわしていた。
時折、亜美の手に何かが触れる。
服が引っ張られたりもした。
しかし、それが何なのかわからない。
不気味なところだった。
亜美は恐怖と不安にかられ、こらえきれなくなって泣きはじめた。
そういう現象は伝染する。すみれも心細くなったのだろう。
涙がこぼれ始めた。
それでも男たちは歩調を緩めようとしない。
掴まれている腕はきっと真っ赤に腫れ上がっていることだろう。
そして、一際大きな木の下にある檻の中に入れられた。
いきなり背中を押されたから、その勢いで亜美が転び、すみれも中に投げ出されていた。
亜美が、すぐさま檻の鉄格子を掴んで揺さぶりながら叫んだ。
「ねえ、出してよ。うちへ帰してよっ。こんなことして、犯罪よ。訴えてやるんだからっ。私のお父さん、警察関係の偉い人なのよ」
カッとしていた。
この亜美を乱暴に扱って、こんなところへ押し込むなんて許せない。
学校中の男の子たちが黙っていない。
しかし、男たちはそんな言葉に怯む様子はなかった。
ただ、ニタリと笑った。
その笑いはまるで爬虫類のようだと思った。
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