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そしてさらにわかったことは、そのまま龍の血や肉を食べたりすれば、その力が強すぎて不老不死どころか、たちどころに死んでしまうということがわかった。
不老不死の効用を期待するのであれば、死んだ龍の肉を何年もかけて、熟成させる必要があるのだと。
レオンは半龍だ。
魔女たちの憶測では、レオンは人間の姿になれば、その血は緩和され、万病を治し、その肉はきっと若返りに役立つに違いないと言った。
それで、レオンは人間の姿になることを強制されていた。
しかし、言われてすぐに、はい、そうですかと姿を変えるような素直なレオンではない。
主のブラッケンは、なかなか言うことをきかないレオンに業を煮やし、人間の姿になるまで餌を与えないことにした。
他にもレオンがおとなしく檻に入っている理由がある。
この霧の里にはキコの木という大木が植えられ、森のようになっている。
キコの木には不思議な力があり、魔物たちや妖魔、魔法使いの術などを極力弱くする作用があった。
買い手の魔物たちが術を使って誤魔化すことのないように、その木は役立っていた。
そうしたことで、誰もが普通に買い物をし、ここでは争い事も少なかった。
レオンの場合、このキコの木の下では骨抜きにされる。
猫にまたたび、という感じで、龍にキコの木。酔っぱらったように力が抜けてしまっていた。
たぶん、人間の姿になれば大丈夫なのだろうが、試すにはリスクが大きすぎた。人間になったらすぐに血を盗られてしまうだろう。
そろそろ白い霧が晴れてきた。
それと同時に辺りが暗くなる。
キコの木の下には、灯りが灯り、それぞれの見世ではその支度に追われている。
レオンの檻の周りでも、ブラッケンが小男たちに細かく指示を出していた。
ブラッケンは、怪しげな雑貨の見世や、野獣の肉を売ったり、小料理を食べさせる食堂もあり、幅広く事業を拡げている。
この市場では、成功しているベスト5に入っているとの噂だった。
今夜もブラッケンは、役に立たないレオンの檻には目もくれず、忙しそうに動き回っていた。
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