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「……お腹すいた」
放課後の帰り道。一組の男女が閑静な住宅街を歩いていた。
歩道のない広い道、端を歩くのは琥珀色の長い髪をしたセーラー服の少女。彼女を往来する車から守るように道の内側を歩くのは対照的に漆黒の髪をしたブレザーの少年だ。声の主は少女だった。
二人は幼馴染だが、少女の方はしばらく外国にいて帰ってきたところ。
その間に店も町も少しばかり変わっており、少年は今日帰国編入してきた彼女を帰り道に軽く案内していたのだった。
「どこかでお茶でもしていきますか?ルキアさん」
ルキアという名の琥珀色の少女は無表情にふるふると首を振る。
「お茶じゃない。ご飯。ご飯食べたい」
「え、お食事ですか?まだ四時ですよ。お昼食べなかったんですか?」
「食べた。パン五種。だがお腹すいた」
この少女、その華奢な体躯に似合わず並々ならぬ大食いにつき、四時間前に人の倍ほど食べたところで、胃はもう、きゅうきゅうと空腹を主張して鳴くのだ。
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