第2章 草食なオレ

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オレは服を脱いで ボクサーパンツ1枚になり 替えのソレを持って風呂場へ移動する。 木本さんの移り香を 洗い流したかった。 シャワーを低めの温度にして頭から暫く被り続けた。 今になってさっきの疲れが夥しいくらいにのし掛かってくる。 木本さんは、何を考えているんだろうか。 オレを引き抜きたい理由はアレだけじゃ分からないな。 まぁ、元々受けるつもりは無いから オレにとっちゃどうでもイイ話だ。 重たい気分も払拭するかのように シャワーのコックを閉じてシャンプーを手に取り泡立てた。 いつの間にか用意されていた オレが使っているモノと同じアメニティ。 そしてオレの家にも勿論、遠野さん仕様のアメニティが こっそりと洗面の棚の中に置かれてある。 風呂場の中では、なく、外の棚の中だ。 オレのはこうして、彼女の家の風呂場の中に随時用意されている。 遠野さんは帰り際に必ずそこにしまって帰るんだ。 律儀な遠野さん。 オレが風呂から上がると 既に片付いたテーブル。 「何か飲みますか?」 健気な遠野さん。 「飲みたいモノ?」 冷蔵庫の前で遠野さんを見下ろす。 青い縁の眼鏡を取りあげると あ、と唇がその形だけを作って、視線は眼鏡からオレに向けられた。 「聞かなきゃ、わかんねぇの?」 顔を近付けて もう、直ぐにでも触れそうにして だけど掠める事もせず尋ねる。 従順な遠野さん。
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